A.ルーミス先生著『やさしい人物画』には、人物を立体的に捉えるための手法を使った描き方について解説されています。パースについて詳細な説明がされているわけではありませんが、本の内容を理解できれば、パースに関する重要なポイントを抑えることができるでしょう。
今回はそんなパースによって人体を立体的に描くための内容を紹介していきます。
プロポーションと地平線の関係
では早速パースによる人物の描画の流れを見てみましょう。遠近感のある画面に3人の人物がいる構図を描いていきます。
なお人物を描く際には、プロポーションごとに描き分けることができると、バランスよく体を表現することができます。
遠近感のある複数の人物が描かれた絵を描く手順
1

設定した眼の高さ(アイレベル)に地平線を引きます。
2

一人目の人物の高さを設定して縦線を引きます。
3

二人目の人物の足の位置を決めます。
4

2点を繋ぐ線を地平線まで引きます。この地平線上にある点を消失点といいます。
5

消失点から1人目の人物の頭上の位置まで線を引きます。
6

2人目の人物の足の位置から垂線を立てます。これが2人目の人物の高さになります。
7

高さを4分割して、それぞれ等分した位置から消失点まで線を引きます。
8

4等分したそれぞれの位置に体のどの部分が来るかを当てはめながら、人体を組み立てます。
9

3人目の人物の足の位置を決めて、2人目の人物を通った線を地平線まで引きます。新しく消失点が追加されます。
10

先ほど同様に垂線と分割線を引きます。
11

3人目の人物ができました。
ここで描いた人物は全て同じ身長となります。一人の人物から同じ身長の人物を量産することや、人物を別の場所へ移動させることができ、複数の人物が描かれた遠近感のある絵を描くことが可能というわけです。
またここで重要なポイントが1点あります。それは、同一地平線上に描かれた同じプロポーションの人物は、地平線が各人物の同じ体の位置を通るということ。上の手順11の画像を見てみると、地平線が3人の膝上の位置を通っているのが確認できますね。
同一地平線上に描かれる同じプロポーションの各人物は、地平線がそれぞれの体の同じ部位を通る
人物の配置と大きさを決める方法

先ほど解説した通り、一人の人物から何人でも描くことができます。上の画像では青の人物からは中央の帽子を被った男性、緑の人物からは右側の男性といった具合に、それぞれの消失点から同じプロポーションの人物を作成しているイメージになります。

アイレベルとなる地平線の位置は人物より上にあっても問題ありません。目線としては俯瞰で見ているといった感じですね。また上の図では女性は男性よりも少し高さを低く設定していることがわかります。ベースとなる人物から高さを調整してプロポーションを決めることも可能というわけです。

アイレベル(地平線)が下の方だと煽りの構図になります。また右側の男性は頭の上部が見切れいていますが、こちらも真ん中の男性を基準にして高さが調整されているため問題なしです。

近くの人物の場合で見切れてしまう場合は、同じプロポーションの人物の半身で測って描くのが良いでしょう。半身の位置は概ね股の部分が来ることになりますね。
絵の中のどの消失点からも正しいプロポーションを描く方法
人物が画面内に収まらない場合には、ベースとなる人物を一人描けばOK。そのキーとなる人物の全身でなくても、体の一部から測ることで大きさを決めることができます。

上の画像は異なる消失点から人物を複製して描いたものです。ベースとなる人物は「立っている人」と「座っている人」を用意。その各人物の頭の大きさから、さまざまな位置に同じプロポーションの人物を配置しています。頭の大きさがわかれば、体全体のプロポーションは描くことができるわけですね。
ただこれは人物が同一平面上にいる場合、すなわち段差があるなど高さが違う場合には適用できない点に注意が必要です。
頭を水平線に引っ掛ける
重要なポイントとして紹介した、同一地平線上に描かれた同じプロポーションの人物は、地平線が各人物の同じ体の位置を通るという内容は、顔のパーツでも同様になります。要するに、同じプロポーションの人物が複数いる場合、地平線に口の高さにあれば、全ての人物の口は同じ地平線上に位置するということですね。

上の画像では、男性は口の位置に地平線が通っているのに対して、女性は目の位置に地平線が来ています。

水平線から割合を取って人物の位置を決めることもできます。上の画像では2頭身分の距離をそれぞれ取って人物を描いていますね。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
これまで紹介した方法を用いれば、遠近感があり尚且つ立体感のある人物画を描くことができそうです。パースについてさらに深掘りすれば、これらの内容の理解もより進むかもしれませんね。
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