A.ルーミス先生著『やさしい人物画』では、骨格や筋肉などの人体の構造から遠近法を使った絵の描き方など、人物画を描く上で必要となる内容が盛り込まれています。
そして『やさしい人物画』には、さまざまな人体の動きを表現した人体模型が多く掲載されています。
今回は人体構造の知っておくべき目印を押さえながら、さまざまなポーズの人体模型をスケッチしてき、何も見なくても人体を描けるようになることを目指します。
人体の知っておくべき目印
人体模型をスケッチしていく前に、まずは前準備として人体の知っておくべき目印を抑えておきたいと思います。
特に注意深く見ておきたい点は、体のどこの部分でアウトラインの線が途切れているかです。そして、そのアウトラインが途切れている部分にある体のパーツが、手前に位置するのか奥側に位置するのかを線で表現する点を押さえておきたいですね。
例えば脚の部分を見ると、人体の表面から見れば膝が前面に突き出ているようにアウトラインを描き、人体の背面であればふくらはぎが立体的に盛り上がっているようにアウトラインで表現するといった具合です。
では実際に脚の特徴の画像を見ながら確認してみましょう。
脚の特徴

脚の外側
脚の外側のアウトラインを上から見ていくと、まず骨が皮膚に近いところが盛り上がっていますね。下図のように骨盤から脚の骨が伸びているためです。

そこから滑らかな凸線でなぞり、膝のあたりで角度が急になっています。膝の下はすぐにふくらはぎが来ています。ふくらはぎは、外側の方が高い位置にあり、反対に内側が低くなるためです。
ふくらはぎは、外側が高く、内側が低い。
そしてくるぶしまでスーッとゆるい曲線が引かれています。アウトラインの線がくるぶしの部分で途切れていますが、ここではくるぶしの方が奥側にあるように線で描かれており、足の甲が前にあるように表現します。
脚の内側
脚の内側では、アウトラインが膝に差し掛かるところで後ろ側を通り、膝の下の部分から前の方に合流しているイメージです。また膝部分は骨があることでゴツゴツした感じで描きます。膝蓋骨も真ん中あたりに描きます。
膝の下はすぐにふくらはぎが来ています。ふくらはぎは先ほど説明した通り内側が低くなります。膝の構造上そうなるといった感じでいいでしょう。そしてふくらはぎから下に伸びる線は引っ込んでいます。画像だとちょっと膨らみすぎですね…。
その下のくるぶしは外側との関係性にも注意が必要です。くるぶしは内側が高く、外側が低い。ふくらはぎとは反対の角度になるということですね。
くるぶしは、内側が高く、外側が低い。
脚の裏側
脚の裏側では、ふくらはぎの角度が表側とは反対になる点に注意します。アウトラインも、内側は低いところ、外側は高いところで線が途切れています。
人体の表面の特徴

肩、首
肩から腕に向かうアウトラインは、骨がある部分で少し盛り上がるように描きます。そして腕のつけ根部分となる三角筋は少しくぼんでいるのが確認できますね。
首の部分にはくぼみが5つ。痩せ型の体型であれば、鎖骨がくっきり見える部分でもあります。
胸、脇、腹、腰
肩の骨から乳頭を通ってへそまで一直線に線が引ける位置関係です。
へそ、乳頭、肩の骨は一直線状にある。
脇の部分は、肋骨にからんだ筋肉が特徴的です。筋肉質な肉体の表現として参考になります。
また胸からへその間には特徴的なしわを描いています。へそ付近や腰にもあるしわは表現したいところ。
腕
腕は、くぼんでいる部分とふくらんでいる部分を捉えたいところです。
三角筋がほんの少しくぼんでいるところは押さえておきたいポイント。また腕を曲げる部分は腱があることで凹みが出る点も注目。
肘は骨がある部分と凹みの部分でメリハリがあります。直線的にならないように、よく観察することが望ましいでしょう。
人体の背面の特徴

首
首の部分には溝があります。そして肩に向けてのアウトラインが骨の部分まで滑らかな膨らみで表現します。
背中
背中は背骨の部分のしわが一番面積が大きいですね。人が直立した時には、背骨の部分の溝が最も深くなる点も知っておきたいところ。
人が直立した時、背骨の部分の溝は最も深くなる。
尻
お尻の上部には二つのくぼみとV字の凹み。そして臀部のくぼみなどの細かな部分も表現したいですね。また腰の部分の骨の出っ張りは背面でも同様です。
腕
腕の部分もアウトラインが正面から見る時とは異なっており、肘の骨などは特に複雑に感じる部分。ここについては、さらに骨や筋肉について詳しく学んでいくことで、より描く際の重要なヒントとなることでしょう。
動きのある人物をスケッチ
では実際に人体の知るべき目印に注目しながら、動きのある人物のスケッチを見ていきましょう。






女性の人体模型
最後に女性の人型模型も確認していきましょう。男性との大きな違いのひとつは、骨盤の大きさが挙げられます。腰骨の位置がへその線まで上がっているのが女性の特徴です。女性のウエストラインはへそより上、男性は同じ高さか、ほんの少し下になります。
他にも、女性は胸郭が小さく、骨盤が広くて深い。そして肩幅は狭いことも特徴的です。
女性の男性の人体模型の主な違い
- 腰骨がへその線まで下がっている。
- ウエストラインがへそより上。
- 胸郭が小さい。
- 骨盤が広くて深い。
- 肩が狭い。
- 乳頭の位置が下がる
女性の人体模型をスケッチ

乳頭の位置は上から2頭身目の少し下に位置します。
ウエストは3頭身目の少し上に位置していますね。

女性のプロポーションを簡単に捉える方法として、人体を3等分して考えるやり方があります。
足元から1/3は膝の位置、2/3はウエストの位置、3/3に頭のてっぺんが来るようにすれば良いです。
女性のプロポーションは、3等分してプロポーションを捉える方法が簡単。
- 足元から1/3の点に膝。
- 足元から2/3の点にウエスト。
- 足元から3/3の点に頭頂。
まとめ
いかがでしたでしょうか。
人体の知るべき目印を押さえながらスケッチをすると、想像による動きのある人物のスケッチも可能になります。
人体についての特徴を、男性と女性でそれぞれ理解しながら、さらに骨や筋肉の構造を詳しく学んでいけば、より説得力のある人物画が描けるようになるでしょう。
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